インド政府公認ヨーガ講師・赤根彰子 エッセイ
くらしのヨーガ 12ヶ月

 それぞれの人のそれぞれの日々は、かけがえのない巻き戻しができない大切な日々です。けれど、つい忙しさに流されて、自分のまわりの環境や人間関係をととのえることや、自分自身の内側の声に静かに耳を傾けることもできずに、あわただしく毎日が過ぎていきます。そんな、なかなか思うようにならない日々。いろいろな出来事に、こころ乱され、体調をくずしそうになることもあります。
 
 ヨーガは「 思うようにならないこと 」を「 思うようになること 」へと導いてくれる道先案内人です。人生は、精神的に成長していく機会 ( チャンス ) を与えられる、有り難い実践の場であるとヨーガではとらえ、どんなことが起きても、ひょうひょうとたんたんと、そのハードルをクリアーしていきます。問題なのは起こってくる出来事ではなく、それにどう自分が反応するか、です。晴れることもあれば、どんより曇りの日も、しとしと雨の日、暴風雨の日もあります。雨を楽しめる人もいれば、曇りが好きな人もいます。天気が問題なのではなく、それをどう感じ、どう対処するか、こころとからだの状態も同じだと、ヨーガは気づかせてくれます。
 
 日々は過ぎ、季節は巡り、また同じ季節がやってきます。たとえ、同じようなくり返しの毎日でも、精神的にはくり返しをつくらないこと、大切な日々の出来事を雑事にしてしまわないこと、生活の中で自分を見つめ、からだとこころをととのえながら、いろいろなことに、きちんと向き合っていくことの大切さを、ヨーガは教えてくれます。ヨーガはからだのエクササイズだけでなく、こころのもち方、考え方、食事、人間関係のとらえ方、伝承医学など、すべてを含んだ「A WAY OF LIFE」( 生きる方法 ) です。
 
 自然の季節の移り変わりの中で、こころとからだをシンプルに自然の状態にして生きることがヨーガ的生き方、暮らし方です。自然に寄り添って、季節を感じながら、一枚一枚暦 (  こよみ ) をめくるように、本当の自分に出会っていく、それが『 くらしのヨーガ 』です。
1月 新年・新しい扉を開いて
 
 近くのお寺から聞こえてくる除夜の鐘の音を耳を澄まして聴きながら瞑想し、新年を迎えます。そして元旦の朝、起きて瞑想しながら、新年の太陽を待ちます。初日の出 ( 太陽 ) に合掌します。
 
 ヨーガには太陽礼拝という免疫力を高める連続したポーズとエネルギーを充電する太陽の気道の呼吸法があって、太陽に想いを馳せて新年最初の日に実践します。4 5億年ぐらい前から輝いている太陽を想うと、時のかなたに気持ちがトリ ップし、その長さにくらべると自分のあっという間の人生、思い煩っているような暇はないと感じます。
 
 一年の計は元旦にあり。今年一年の目標と計画をたてて、新しい年の新しい扉を開いて、今年がヨーガ的な自由で平和で幸せな日々でありますようにと祈ります。
 
1月のアファメーション ( 誓約 ) < いつでも新しい扉を開く心の準備は出来ています >
 

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2月 節分・変化を求めて
 
 2月は旧暦の新年。1月に目標を立てて、すでにつまずいてしまっていても、仕切り直します。いつも自分勝手に、自分の角度で物事を見てしまいます。それはときに偏見 ( 偏った見解 ) に満ち、ときに独善 ( 独りよがり ) に陥ります。
 
 ヨーガでは俯瞰的 ( 高い所から見る ) に、物事をとらえるように勧めています。一つの角度からだけ物を見ていると見えないことがある、真実をつかめないということです。人はあるがままに物を見ていません。自我 ( エゴ ) を通して見ている、自分が思うように見ているということです。
 
 鏡が歪んでいるとそこに映る自分が歪んで見えます。こころが歪んでいると歪んで世界を見てしまいます。鏡が曇っていると自分がよく映りません。こころが曇っていると世界が曇ってよく見えません。自分自身もよく見えません。ヨーガではこころの歪みをとりのぞくこと、こころの曇りをとりのぞくことを勧めています。
 
2月のアファメーション < 角度を変えて見る勇気をもちます > 
 

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3月 春のお彼岸・paramita
 
 春分の日は真東から太陽が昇り、真西に太陽が沈む日とされています。春は立春から立夏の前日までで、春分の日はその真ん中に位置し、その前後3日間をあわせた7日間を春のお彼岸と言います。春分の日は、お彼岸のお中日と呼ばれます。
 
 彼岸 ( ヒガン ) は、サンスクリット語のparamita ( パーラミター ) < 至彼岸 > の略語で、生死流転に迷う此岸 ( シガン ) に対し、煩悩の流れを超えた悟りの境地をいい、涅槃とも同意語です。
 
 彼岸 ( 悟りの境地 ) の日、人は彼岸ではなく、お墓参りに行きます。彼岸桜も咲いているでしょうか? 煩悩 ( サンスクリット語ではklesa < クレーシャ > 人間の心身を悩ますすべての欲望 ) から離れた、お彼岸の日を過ごしたいです。
 
3月のアファメーション < 執着を離れ、煩悩の流れに溺れないようにします >
 

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4月 いつくしみ・スィートな関係
 
 家の前を朝と夕方、散歩する小さな白い犬をつれたおばあさんがいます。おばあさんもその犬も高齢でよぼよぼしています。
 
 けれど雨の日も風の日も雪の日も、よぼよぼしながら朝と夕方かかさず 散歩しています。雨の日や雪の日には、おばあさんはレインコートを着ておそろいのビニールの帽子をかぶっています。そして可愛い小犬もレインコートを着て、おそろいの帽子をかぶっています。
 
 雨の中をよぼよぼ歩いて行くその後ろ姿をみると胸がジーンと熱くなります。しかも2人 ( ? ) ともちょっと、がに股です。とってもスィートな関係です。ヨーガでは、他との関係について、いつも慈 ( いつくしみ ) の関係であること、スィートな声で話し、スィートな気持ちで接することを教えています。
 
4月のアファメーション < スィートな声でスィートな気持ちで接します >
 

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5月 すずらん・自分を見つめる
 
 シャーンティボタニカルガーデン ( 平和の庭 ) に咲いている白いすずらんの花。他の草木に埋もれて気づかずにいたのですが、5月のお休みに庭の草取りをして
 
「あらっ、こんなところにすずらんが......」と見つけました。なんと可憐な花。下を向いて咲いていて、とても謙虚な印象です。静かにまぶたを閉じて、意識を内側に向けて瞑想しているような、そんな静けさを感じる花です。
 
 日常生活で、私たちの意識は外に向かっています。ヨーガではその意識を内側に向けて自分自身と向き合います。静かに自分を見つめるひとときが、私たちを限りなく癒してくれるのです。
 
5月のアファメーション < 静かに自分を見つめるひとときが、自分を癒します >
 

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6月 移りゆくもの・紫陽花
 
 紫陽花の季節、梅雨に入ると街には傘の花が咲きはじめます。早朝のすがすがしい空気の中、紫陽花はその色を変えていきます。
 
 インドでは、まだ日が昇らないうちから、花売りが道ばたに座って、マラと呼ばれる花輪をオレンジ色の花と黄色い花と白い花でつくっています。オレンジ 色と黄色と白色は、インドでは神聖な色とされています。それを人々は買って、祭壇に飾ります。
 
 南インドでは、女性は花を髪につける習慣があって、そのジャスミンの花のいい香りが、すれ違うたびに香って、暑いインドで爽やかさを感じる瞬間です。そんな美しい伝統的な習慣も女性の髪型の変化によって変わりつつあります。変化していくことは悪いことではありませんが、美しい習慣や伝統は残ってほしいと思うことも多くあります。
 
6月のアファメーション < 変化を恐れず、けれど大切なことはキープします >
 

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7月 七夕・祈りのヨーガ
 
 7月7日は七夕です。今年、彦星と織り姫は無事に会えるでしょうか?
 
 ヨーガは『結合』と言う意味で、宇宙の意識と本当の自分を結び合わせます。私たちはこの人生でいろんなものと結合していきますが、きちんと洞察して何と結び合っていくのかを、しっかりと選択していく必要があります。
 
 七夕の願いごとは、いつも世界平和と自分自身の心の平安です。ヨーガではお願いごとは祈りではありません。祈りは自分を明け渡すこと。大いなる存在に自分をゆだねることで、エゴをなくして純粋になることが祈りです。
 
 そうして宇宙の意識と真我を結び合わせます。
 
7月のアファメーション < 自我を離れ、自己を明け渡し、心の平安を祈ります >
 

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8月 ガンジスの流れ・大切なものに気づく
 
 インドのヨーガアーシュラム ( ヨーガ道場 ) に滞在していたとき、毎晩のように停電になり、ろうそくの明かりで闇夜を過ごしました。ろうそくの明かりだけだと、できることはかなり限られるので、静かに時 ( とき ) を過ごすことになります。まわりの光景が消え失せて、大切なことが見えてくる気がしました。
 
 それは目で見えるものではなく、目に見えないものが大切なのだと気づく時間です。ガンジス川のほとりのヨーガ道場で停電になると、川の音がいつもより大きく聴こえました。明かりがついていると、目の働きが優位になり、目に見える物が優先されます。でも暗闇だと耳の働きが優位になるからです。
 
 インドの停電の夜、ろうそくを灯してガンジスの川の音をただ静かに聴いていました。その音を聴いていると古代からこの流れの音があり、しかも祈りを捧げられてきたガンジス、そのほとりに滞在していることを幸せに思いました。悠久の川の流れの音の中に私自身が溶けて、私のエゴも消えていくような瞑想的な時 ( とき ) の流れでした。
 
8月のアファメーション < 目には見えない大切なものに気づくように心の声を聴きます >
 

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9月 秋のお彼岸・月のラーガ
 
 満月は東洋では聖なる日として重要な日とされています。インドでも満月の日、人々は断食してお祈りしたり、ガンジス川に聖なる水をくみに行ったりします。
 
 満月は成就することやこころの安定を象徴しますが、こころが混乱している人や不安定な人は、月の青白い光の影響を受けやすく、逆に不安になりやすいと言われています。
 
 お彼岸は、自分を省みる期間です。沈黙して、自分を静かに見つめます。人は省みることをしないと、体と心の欲望や衝動に突き動かされてしまうと、ヨーガでは注意しています。
 
 こころを安定させるためにも、物事を成就するためにも、沈黙して、エネルギーのロスをなくし、お彼岸というバランスの良い日に、心身をととのえます。
 
9月のアファメーション < 深い沈黙が無限の可能性を引き出してくれるのです >
 

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10月 コスモス( 宇宙 )・秋のラーガ
 
 新月の日は、願いごとでもしてみようと思うのだけれど、空を眺めていたら、空が広がっているだけでいいな〜と思い、そんな風に、いつものんびりしています。青空に雲がかかっていても、やがて風が吹いて雲が流されていきます。
 
 生きているとこころに雲がかかって、すっきりしない日があるけれど、それでもやがて風が吹いて、気持ちが晴れるときが来ます。それはヨーガをしてからだがほぐれたあとや、静かに座って呼吸をととのえてこころが落ち着いたとき、なにげない誰かのひとことを聞いたときなどに、こころの雲が晴れる瞬間はあるようで......。
 
 今日、受けとったこころが晴れる言葉は
「 Don't make it bad. ( 悪くとるなよ〜〜 ) 」でした。
 
10月のアファメーション < 何事も悪くとらないように、心がけます >
 

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11月 ヨーガなくらし・光を求めて
 
 日々のくらしは、物理的に雑事に忙しく、精神的には過去の過ちにとらわれ、将来の不安でいっぱいです。今日は今日一日を生きること。昨日,明日のことは考えないようにします。
 
 インドでは10月から11月に太陰暦の新年・光のお祭りがあります。実りを迎える季節。正義が悪を征服し、霊性の闇を照らすことを象徴する光の祭典です。
 
 ヨーガでは、本来の自分は光り輝く存在で、それを見出せないのは、煩悩の闇が、本来の自己を覆ってしまっているからであるといいます。それを実感するためには、純粋になること。純粋なシンボルとして光をイメージし、集中して瞑想すること。そういうヨーガの時間をもつことが、こころの安定をもたらし、こころを強くすることになります。
 
11月のアファメーション < こころの闇を取り除き、本来の純粋な自分を取り戻します >
 

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12月 シクラメン・浄化
 
 白いミニシクラメンが庭に咲いています。白い花は清浄な感じがします。シクラメンの和名は「 篝火花 ( かがりびばな ) 」 別名は「 豚の饅頭 ( ぶたのまんじゅう ) 」 花言葉は「 清浄、内気、嫉妬 」 ヨーガではネガティブな感情やエネルギーをもたないように、からだとこころを浄化します。日々の生活では生活環境も重要で、それにはまずは部屋の掃除です。真っ白のキャンバスに絵を描き始めるような、創造的なことをしたくなる、清浄なことを落ち着いて考えるのに適した空間を作るように心がけたいです。お寺では、大晦日の夜に108の煩悩の数の鐘をついて、煩悩を清め新年を迎えます。大晦日の夜、除夜の鐘を聴きながら瞑想し煩悩を清めたいと思います。
 
12月のアファメーション < 体と心、環境を浄化して、新年を迎える準備をします >
 

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